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『10の「困った!」で知る、創業時の法律マメ知識#4』

こんにちは。弁護士の藤原美佐子です。
第2回、第3回と株式会社と合同会社の違いについてお伝えしてきました。

第4回目となる今回は、
株式会社を設立することに決めた場合、
資金調達の方法としてよく聞かれる、こちら↓の質問です!


◆質問④◆==================================

会社を作るなら、お金を出すといわれました。株を持ってもらう(出資)のと、
お金を貸してもらう(借入)のでは、どちらがいいのでしょうか。

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◆回答◆

経営リスクとなる株式の問題を避けたい場合には、お金を貸してもらう(借入)。
企業価値を上げていきたい、利息の支払いは避けたいなどの場合には、
株を持ってもらう(出資)こと
をおすすめします。


今回の質問に関しては、すでに、ABSブログの萩口先生のコラムで
お金の面だけでなく、法律的な点についても、解説してくださっています。


●資金調達の視点から
『起業における、賢い資金調達術!』#4
「融資か出資か。それぞれのメリット・デメリット」


 ●エンジェルや知り合いからの出資を得る場合、また共同経営をする場合を想定して
『起業における、賢い資金調達術!』#7
「出資をするとき、してもらうときの留意点」


そこで私のコラムでは、
経営リスクともなる株式の問題について、
どんなものがあるか、具体的な例をお伝えしていきたいと思います。


代表例として、大きくは2つあります。


1 顔の知らない人に株式が承継されるというリスク
2 株主が行方不明になるというリスク


■1 全く知らない人に株式が承継されるリスク

 

「株式」は、株主総会で議決権を行使するなどの経営権ともいえます。
しかし一方で、売却の際には、企業の業績に従い、
経済的な価値を持つことになります。
上場企業で考えていただければ、分かると思いますが、
業績に従って株価が上がったり下がったりしますよね。


前回お話ししたように、株式会社は、不特定多数の人から
出資を募ることに適した会社類型となっています。
このため、経営権と、企業の経済的価値が一体となった「株式」は
自由に譲渡することができることになっています。


株式を購入した人は、新たな出資者となり、
売却した人は、投下資本を自由に回収することができるんです。


中小企業では、不特定多数の人から資本を募る必要がないため、
ほとんどの株式会社は、株式に譲渡制限をかけています。


一般的には、株式を譲渡する際には、取締役会の承認を、
必要とするという定款の規定が設けられています。
(株式譲渡制限会社では、取締役会および監査役の設置が任意になり、
取締役を1人のみとすることも可能となります。)


でも、この規定、譲渡そのものが禁止されているわけではないんです。


それでは、どういったケースがあるのか、具体例で見ていきましょう。


例1:株式が相続された場合------------------------------------------------------------


Xさんは、勤務先を退職して、今までの経験から、
新しいビジネスをするために会社を設立することにしました。


ビジネススクールで一緒に勉強していたAさんが、Xさんのアイディアを
認めてくれて、「会社を設立するならお金をだすよ」といってくれました。


Xさんは、利息の支払いに不安があったので、
Aさんに株を持ってもらうことになりました。


ところが、Aさんが亡くなって、Aさんの奥さんのBさん、お子さんのCさんが
2分の1ずつ株式を相続してしまいました。


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定款で株式の譲渡制限ができるのは、売買、贈与のように、
意思表示によって譲渡しようとする場合で、相続の場合には、制限をすることはできません。


元の株主Aさんは知っているけど、その奥さんやお子さんは知らないし、
株式を持ってもらったら困るという場合がほとんどですよね?


そこで、B、Cさんに対して、その取得した株式を株式会社に、
売り渡すことを請求できる旨を定款で定めることができます。


その場合は、以下の手続きが必要になります。


【売渡し請求のための手続きの一部】


●B、Cさん以外の株主が持っている中議決権の過半数が
出席した株主総会で、議決権の3分の2以上の賛成が必要
●売買価格が決まらなかった場合は、裁判所に価格決定の申立
●会社が直接買い取る場合は、買い取るための財源は剰余金の分配可能額に制限される
→ つまり、会社に買い取るためのお金がないと買うことはできません


手続きがとても複雑・・・ではありますが、
相続があってもこうしておくことで対処することができます。


例2:Aさんが勝手に売ってしまった場合------------------------------------------------


Aさんはお金が必要になって、Xさんが全く知らないDさんへ売ってしまいました。
Dさんが、株式会社に対し、譲渡の承認をするか、しないのであれば、
株式会社か、株式会社が指定する人が買い取る旨を請求してきました。


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AさんとDさんとの間では、売買が成立します。


会社の承認を得る前に、株式の譲渡をしてしまうこともできます。
株式の譲渡を受けたDさんが、株式会社に対し、
譲渡の承認をするか、しないのであれば、株式会社か、
株式会社が指定する人が買い取る旨の請求をすることができるのです。


この場合も、相続の場合と同じように手続きが複雑なんです!


【買い取り請求のための手続きの一部】


●Dさん以外の株主の議決権のうち、
過半数が出席した株主総会で議決権の3分の2以上の賛成が必要
●売買価格が決まらなかった場合は、裁判所に価格決定の申立
●会社が直接買い取る場合は、買い取るための財源は剰余金の分配可能額に制限される
→つまり、会社に買い取るためのお金がないと買うことはできません
●買い取る人を指定できますが、一株あたりの純資産額に当たる金額を
法務局に預けなければならないというわけで、譲渡制限をしていても、
知らない人に株式が承継されてしまうリスクはあるというわけです。


承継されないように手続きをとることもできますが、
上記のように、とても複雑な手続きが必要になってしまうということを、
ぜひ覚えておいてくださいね。


■2 株主行方不明のリスク

 

アタッカーズで一緒に勉強してきた仲間や、
会社を辞めて起業を決意したときの友人などに株をもってもらうことにした。
その後、会社経営に没頭し・・・


●数年が経ち、株主の連絡先がわからなくなってしまった。
●不意の事故で株主が亡くなってしまったが、相続人が誰か分からなくなってしまった。


中小企業であっても株式会社であれば、
少なくとも年に1回は定時株主総会を開くことになっています。


しかし、実際には、株主総会は、形だけのものになってしまって、
開催したとする議事録だけが存在することも多いのが実情です。


株主総会を開くためには、株主に対して招集通知を送付することになっているのですが、
そのような通知をしていない剰余金の配当も一切おこなったとがないという会社も多く存在します。


このため、連絡を取ることができなくなったり、
相続が発生した等の事情を把握することができなくなったりします。


株式の過半数を経営者が所有していることから、
手続きに不備があっても株主総会の結果が変わることはないかもしれません。


しかし、株式を1株でも持っていれば、
株主総会に出席して意見を述べる権利があるわけですから、
そのような不備は、瑕疵として、株主総会決議取消しの訴えを、
提起されてしまうこともあります。


行方不明の株主に対する手続きに不備があることで、
思わぬリスクを負うことになるのです。


  【行方不明株主のリスクを解消するための手続】

●株主に対する通知の省略


株式会社が株主に対しておこなう通知や催告が5年以上継続して到達しない場合には、
その株主に対しておこなう通知や催告を省略することができます。


この省略の手続を適法に行うためには、毎年きちんと通知をおこない、
その通知が届かなかった証拠をしっかり残しておく必要があります。
たとえば、特定記録郵便等で通知を送付し、
戻ってきた通知を保存しておくなどの方法が考えられます。


さらに所在不明の株主の株式を売却する手続も会社法に定められています。
この手続きも簡単ではなく専門家へ相談しながら対応せざるを得ません。


借入であれば、返済と利子の支払いというお金の問題だけとなり、
経営に没頭し利益を上げることに集中することができます。


資金調達をするにあたって、株を持ってもらうということは、
お伝えしてきたような、株式の管理のリスクを負うことになります。


誰が、どのくらいの割合で株式を持つのか、
知らない人に渡ってしまった株式をどのように回収するか、
議決権のない株式を発行するなどして経営に関与させないなど、
事業の運営のみならず、株式の管理も経営で決定しなければならない事項に
加わってきます。


株を持ってもらうと返済がいらないと安易に考えずに、
これらのリスクにもしっかり目を向けてくださいね。


■予告

次回の質問はこちらです↓


◆質問⑤◆==================================


類似商号規制が廃止され、新しい会社法で柔軟な記載が
認められるようになったと聞きました。

株式会社ビジネスブレークスルーという会社を千代田区に設立。
無事、登記も完了しました。


しばらくすると、株式会社ビジネス・ブレークスルー(既存の会社)
代理人の弁護士から
会社の名前を使わないようにという内容証明届きました。


登記はできたのに、使えないのでしょうか?


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■つぶやき

私の住んでいる秋田は、朝晩めっきり涼しくなり、稲穂も黄金色に色づいてきました。
事務所を立ち上げて、半年が過ぎようとしています。
依頼者の方への対応をしながら、事務所の運営を考え、決断をする。
事業主として誰もがしていることですが、
時間がいくらあっても足りないなあと感じています。


今日お伝えしたことは、普段は全く見えないリスクですが、
浮かび上がってきたときには、事業に支障をきたしかねないものです。


忙しい中でもこういったことを、積極的に受け入れて、普段から意識し、
経営に組み込んでいくのか、できれば避けたいとするのかそれはあなた次第。


でも、見なかったこととせずに、アントレプレナーとして決断を
しっかりしていっていただきたなと思います。


それでは、次回もどうぞお楽しみに!

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