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『10の「困った!」で知る、創業時の法律マメ知識#3』

こんにちは。弁護士の藤原美佐子です。

前回予告した質問は、◆質問②◆の後段

◆質問②◆==================================

株式会社と、合同会社って何が違うの?

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でしたね。
これでは、質問が抽象的すぎるので、具体的な質問におとしこんでみました。

というわけで、第3回目となる本日のQ&Aはこちらです。

今回は、仲間と会社を設立した際の、利益分配に関する質問です。
株式会社と合同会社の違いについても触れながら解説していきたいと思います。

◆質問③◆====================================

 

私(A)は、以前から将来性がある事業について経験やノウハウをもつていました。
その事業の将来性を買ってくれたBさんとCさんと株式会社を設立することにしました。


私100万円、Bさん200万円、Cさん300万円を出資して【株式会社】を設立し、
私(A)、Bさん、Cさんを取締役とし、Cさんを代表取締役に選任しました。


設立した会社の業績は好調で、利益がでました。
株式会社は原則として、株式数に比例して利益分配がなされます。
したがって、利益分配は、私(A):B:Cは1:2:3となります。


自らのノウハウや経験が利益に貢献していると考えている私(A)は
おもしろくありませんでした。


私(A)は、BさんとCさんに不満を伝えましたが、会社が軌道にのって、
私(A)の力をもはや不要と思った、BさんとCさんは、株主総会で、
私(A)を取締役から解任し、
外部から取締役を選任してしまいました。


設立当初はここまで考えが及びませんでしたが、このような事態を
避けることもできたのでしょうか?


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◆回答◆

出資割合ではなく、その人ごとに配当割合を自由に決めることができる、
合同会社を設立するという選択もできたのではないかとおもいます。


株式会社では、利益の配当は原則として、保有する株式数に比例します。
合同会社では、定款で定めた場合には、持ち分に比例せず、
自由に利益配当を決めることができます。


 

★Point in Check!★
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   出資をすることによって得られる地位が違う!

 

株式会社は、出資をすることで、「株式」を所有し、「株主」という地位を取得します。
合同会社は、出資をすることで、「持分」を所有し、「社員」という地位を取得します。


※ここでの「社員」という言葉は、合同会社の持分を有する「社員」を指します。
「従業員」と紛らわしいですが、会社法上は区別されています。


 株式会社は、不特定多数の者から出資を募ることに適した会社類型となっているため、
株主は原則として,「個人」としての平等ではなく、「株式」を保有する割合に応じて平等な扱いを
受けることになります。利益を配当する場面でも、同様に株式数に比例して利益配当がなされます。


一方、合同会社は、社員の個性が重視される会社類型となっています。
このため、社員が同意すれば定款で自由に利益配当を決めることができます。


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では、Aさんが、合同会社を選択していた場合、どのような問題がおきるでしょうか。
Cさんの視点から考えてみましょう。


◆合同会社の場合  ================================


私(C)は、Aさんが将来性のある事業について経験やノウハウをもつていたので、
その将来性を買って、事業を始めることにしました。資金が不足していたので、
Bさんも誘って、合同会社を設立しました。


私が300万円、Bさんが200万円、Aさんが100万円を出資しました。
持ち分に比例しない利益分配が可能ということで、合同会社という形を選択しましたが、
経験やノウハウはAさんがもっていたこと、この事業にはBさんの出資が必要だったことから、
利益配当は、A:B:私(C)で1:1:1としました。


その後、会社が成長するとともに、私も経験を積んで、Aさんを超える知識や経験を持つように
なったので、利益配当を出資割合にしたいとAさんやBさんに提案しました。


定款変更には総社員の同意が必要ですが、Aさん、Bさんは自分の配当が減るため、
定款変更に同意してくれません。そこで、私は、二人に退社の請求をしました。


ところが、退社についても他の社員の全員の同意が必要となるため、
AさんやBさんは、これを認めませんでした。


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いかがでしょうか。もうお気づきだと思いますが、
Cさんの立場に立つと、株式会社を選択するべきだったということになりますね。


事業を始めてみると、トラブルが起きたり、予想と違う事態に陥ったりでその対応方法で
仲間どうしで意見が対立してくることもあります。ですから、最初が肝心です。


上記のようにどちらのケースもあるということを関係者全員がわかったうえで、
納得のいく選択をしていただきたいと思います。


株式会社と合同会社の違いでおきうるトラブルも異なりますし、
そのトラブルシューティングの方法もあったりなかったりしますので、
今回は、他にも株式会社と合同会社の違いをご紹介しておきたいと思います。


ぜひ、参考になさってみてください。


 

■株式会社と合同会社の違い

株式会社と、合同会社では、大きく3つの違いがあります。


① 組織
  株式会社と、合同会社は組織構造が異なります。


②  会社の決算の公告
  株式会社は、決算を公告する必要がありますが、合同会社は、その必要がありません。


③  設立手続きについて
  株式会社は、定款を公証役場で認証し、設立登記に最低15万円の登録免許税が
かかりますが、合同会社は定款認証が不要で、設立登記は6万円の登録免許税ですみます。


組織
株式会社と合同会社の組織を図にして比較してみます。


藤原さん 第3回 投稿画像2


○業務を執行する人について


株式会社は、不特定多数の者から出資を募ることに適した会社類型にするため、
原則として、株主の多数決(資本の多数決)によって重要事項を決めます。


業務の執行には、株主と異なる地位である取締役等があたります。
取締役は、経営の専門家として、株主から選ればれるのです。


一方合同会社は、原則として総社員の同意によって運営され、社員自ら業務の執行にあたります。


従って、株式会社は、構成員である株主以外の第三者に会社の業務執行をゆだねられますが、
合同会
社では、構成員である社員にしか、業務執行をゆだねることができません。


では、「業務執行」とは何を指すのでしょうか。


会社はある一定の目的をもって設立されます。例えば「不動産賃貸」、「サイトの運営」などです。
この目的を達成するための【事業戦略・計画の立案】【目標の設定】【製品の販売】そして
【従業員の管理】などが、「業務執行」にあたります。


取締役会が設置される株式会社の場合は、その「業務執行の決定」を取締役会が行いますが、
合同会社の場合には、そもそも「取締役」というものが設置されません。


そのため、社員がそれを担うことになります。


★豆知識★
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代表取締役という役職


「会社の社長さんってだいたい『代表取締役社長』っていうよね?合同会社って、
『代表取締役」」っていないの?といった質問をよく受けます(笑)。


株式会社は、会社代表者が代表取締役を名乗ることができますが、
合同会社は、名乗ることができません。
法律が規定している組織がそもそも異なるからです。


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株式会社は、株主の人数ではなく、出資に応じて付与される議決権に比例して
意思決定ができるため、出資割合が高い人の意思が反映されやすいことから、
ワンマン経営が可能になります。


先ほどの質問のうち、株式会社を設立した場合の、
BさんやCさんがこれにあたります。


出資割合が高い人の意思が反映されるわけです。


一方合同会社は、利益分配など社員の意思で自由に定款を定めることができます。
社員同士で意見対立がおきた場合には、話し合いによって、
意思決定をしていくことが重要になりますが、理性的な話し合いができない場合、
収まりがつかなくなってしまう可能性があるということなのです。


会社設立時には、こういったことも想定して、
慎重に会社の組織というものを選択していくといいですね。


②  会社の決算公告


 

株式会社は、決算を広告しなければならず、広告をしなかったり、
不正の広告をした場合は100万円以下の過料があります。


かつては、公告の方法が、官報や新聞など公告の費用がかかることや、
取引先の公告を探すのも大変でしたが、最近では自社のHPでの掲載が可能となったので、
公告がしやすくなったといえます。これに対し、合同会社は決算の公告の規定はありません。


③  設立手続きについて


藤原さん 投稿画像 表 パワポver最新


株式会社も、合同会社も定款を紙で作成する場合には、印紙が4万円必要になります。
電子定款を作成する場合は、いずれの会社も4万円(※)は不要になります。


ただし、電子定款の作成には、発起人又はその作成代理人が電子署名を有していることが
必要である上、法務省のオンラインシステムにログインするには、
必要機材及びユーザ登録、IDの取得が必要で、一定の費用が掛かります。


株式会社の場合は、公証人による定款認証の手続きを経なければ、
効力を生じないとされていますので、定款認証の手数料がかかります。


合同会社では、この手続きは必要ありませんので、この点で合同会社は、安く済み、とてもいいですね。


合同会社は、定款で自由に決められることが株式会社に比べて多くなっているのが
メリットですが、法律上自由に決めることができないとされていることもあります。
その利点を十分に活用するためにも、専門家の意見を聞く機会を持つようにした方がいいと思います。


法人税の軽減措置により、合同会社の設立が増加している統計が発表されるなど、
合同会社に注目が集まっています。
会社設立の際には、株主の「個性」より「株式」に応じた取り扱いがなされる株式会社なのか、
社員の「個性」を重視した取り扱いになっている合同会社なのか、
今回のコラムを是非参考になさってみてください。


 

■次回予告

 

次回の質問はこちらです↓


◆質問④◆==================================


会社を作るなら、お金を出すといわれました。株を持ってもらうのと、
お金を貸してもらうのでは、どちらがいいのでしょうか。


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具体的な違いについても解説していきたいと思いますので、
どうぞお楽しみに!


■つぶやき

 

今回は、組織のお話でしたので、読み進めるのが難しいと思われた方もいらっしゃるかもしれません。
でも、法律家の立場からすると、会社の組織ってとっても大事だと思うんです。
これを見誤ってしまうと、事業どころではなくなってしまうことだってありえます。


どんな人とどんな事業をやろうとしているのか?
その人の性格や関係から、将来的にどんな問題が起きそうか?


それによって組織の考え方が変わるはずです。そして、そこには法律が関わってきます。


私は、アタッカーズ・ビジネススクールの
「アントレプレナーシップ講座」(フランソワ・デュボワ講師)で、こうした将来の
問題発生の芽にきちんと目を向けることの大切さを学びました。


よくわからないからと言って目を背けるのではなく、
今のうちから問題発生の小さな芽にきちんと目をむけてくださいね。


それでは、次回もどうぞお楽しみに!

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