Attackers Startup News

『スタートアップ経営者のための、知っておきたいお金の話#9』

こんにちは、公認会計士・税理士の萩口義治(はぎちゃん)です。

アタッカーズ・ビジネス・スクール(ABS)で、
起業家としてのアントレプレナーシップや、ビジネスモデル、
経営戦略など経営のいろはについて学んで参りました。

そんなABSでの日々を経て、2012年の12月に起業し、
現在は、創業・スタートアップの経営者の支援に特化した会計事務所「はぎぐち公認会計士・税理士事務所」
「資金調達に強い」コンサルティング会社「株式会社HG&カンパニー」の経営をしております。
先日、大前塾長が講演されていらっしゃいましたが、
クラウド会計のマネーフォワード社のイベントに私も参加させて頂きました。

同社の「MFクラウド会計」を利用すると、クラウドでどの端末からも
会社の数値を見ることができ、かつ、銀行入出金やクレジットカードなどを利用した
経費が自動で会計処理されるという機能を備えています。

弊社では、「MFクラウド会計」を積極的に活用し、経理のいない経営者にとって
効率的な経理体制の構築を支援してきましたが、結果として現在、
その導入事例数は、弊社が関東の会計事務所で1位なんだそうです(驚)!

ITに取って代わることのできない付加価値(資金調達や経営支援)を提供しながら、
IT化できる部分はITを用いて顧客の業務をどんどん効率化して参ります。

■今月のテーマ


前回は、「創業経営者の短期と長期」というテーマでお送りいたしました。


創業の場合は特に、
①まずは経営者やその家族が生活し、事業を継続していくだけのキャッシュ・フローを
維持していく必要があり、そのためには、長期的な目標である事業ばかりではなく時として、
「日銭稼ぎ」の方法を考えることが必要となることもある点


しかし一方では、


②事業がそれなりに回り始めたときに現状維持となるのではなく、長期的な目標に対して
邁進していかなくてはならない点、そしてその長期的な目標も色々な勉強や
刺激を受けながらどんどん進化させていく必要があるといったことを述べました。


さて今回は、致命的な値下げ、効果絶大の値上げというテーマです。


企業の売上=商品単価*数量


ということですが、商品やサービスを所与とすると、先に決めなくてはならないのが、
商品単価すなわち、「商品の価格」です。


お客さんは、商品とその価格を見て、買うか買わないかを決めるので、
「商品の価格」によって、数量もある程度決まってきます。


売上ベースで考えると、商品単価を10%値下げしたら、
数量を約10%増加させれば同水準の売上は維持できるからOKと
考えてしまいがちですが、その意思決定は大きな誤りです…


 ■値下げの意思決定は、利益ベースでしましょう

 

販売価格を下げて、値下げ前と同じ売上水準になったとします。
販売価格を下げたので、一個あたりの利益率は低下しているので、
利益は値下げ前よりも減少していることになります。


 値下げするか否かは、値下げによって、
「獲得できる利益が増加するか否か」という利益ベースで考えなくてはなりません。


では、実際に、値下げすることで会社の利益には、
どのような影響があるのか、見ていきましょう。


■「ちょっと値下げ」のインパクト(影響)は、ちょっとどころでは済まない

 

商品単価1,000円、仕入原価700円、固定費30万円の事業があるとします。


 1個あたりの粗利は、300円です。
損益分岐点となる売上数量は、30万円÷(1,000-700)円=1,000個になります。


 これが、売上を10%オフして、商品単価900円で販売した場合、
1個あたりの粗利は、200円となり、33%ダウンしてしまいます。


それによって、損益分岐点となる売上数量は、30万円÷(900-700)円=1,500個になります。


値下げ


たかが10%の値下げで、売上数量を50%も増加させないと、
損益分岐にたどりつかなくなってしまうわけですね。


これは、価格10%の値下げによって、利益率が10%以上減少してしまうためです。
このケースでは、実に33%も利益が圧縮されてしまい、それを取り返すのに、
50%もの数量の増加が必要になるということです。


当然値下げによって、利益が増加するのであれば値下げは有効と考えるべきですが、
そのためには、数量で大きく取り返さなくてはならないということを理解してください。


 原価率にもよるのですが、ちょっとした値下げが利益を
かなり圧迫することがあるということをご理解頂ければと思います。


 ■逆に、「ちょっとの値上げ」が、会社を救う

 

逆にいえば、値上げの効果は大きいということになるのですが、先ほどの例ですと、
商品単価1,000円、仕入原価700円、固定費30万円のビジネスにおいて、
商品単価を10%アップさせて、1,100円にしたとします。


その場合、1個当たりの粗利は400円(33%増)となり、
損益分岐点売上数量は75個(25%減)となります。


 値上げ

■創業の経営者は、価格を安く設定しがち

 

結構、価格をつけるのって、怖いんですよね。
創業経営者のよくある傾向としては、


①商品を決める
②売れるかどうか自信がないので、価格を低めに設定する
③ある程度売れてくる
④忙しいのに、儲からない


 というパターンが多いです。本来は、①~④のあとに、


 ⑤値上げする


 が必要なのですが、一度決めた価格を値上げすることに抵抗を持たれる経営者さんは多いです。


 ITサービスなどは、最初はユーザーを増やすために、
フリー戦略やフリーミアム戦略を採用したりもしますし、ユーザーが増えることで
サービスの価値が増すことで、最初安くしながらユーザーの増加に応じて
値上げしていくということが計画されていることもあるかと思います。


が、そうでなければ、価格が一度公表されていたりすると、
既存客離れが怖くて、なかなか価格を変えられないことも多いかと思います。


最初は、利益を出すというよりも商品やサービスオペレーションの試運転期間、
研究開発期間として安くやるのはいいと思います。


 しかし、商品やサービスオペレーションが固まってきて、
顧客に一定の価値を提供できると確信したら、
しっかりした価格で売っていかないと、いつまでたっても事業に余裕がでてきません。


 特に、「忙しいのに儲からない」という方々は、価格が低すぎる可能性が高いです。
こういう場合には、既存のお客さんの数%がいなくなっても、価格を上げるべきです。


価格をあげたことで、お客さんの数が減っても、利益が以前より増加することもあります。


また、価格をあげたことで、お客さんの一部が離れ、時間が空いたとしても、
営業してまたお客さんを集められれば、依然より値上げした状態でのフル稼働になり、
利益のレベルが変わってきます。


すこし勇気が必要ですが、「既存のお客さんが減ってもいいから、値上げする」
ことを検討してみてください。


■値下げに逃げない、値上げを諦めない

 

上記のように、結構値下げの悪影響は大きく、値上げの好影響も大きいといえます。


交渉上、値下げを要求されることも大いにありますが、値下げをすると、
値下げ⇒利益がでない⇒余裕がない⇒ギリギリのサービス
一方で、値上げをすることができれば、


値上げ ⇒ 利益が出る ⇒ 事業投資 ⇒ 顧客満足度があがる ⇒ また値上げ


 という正のスパイラルになります。


 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランド社などはその典型だと思います。
つい先日も「アナと雪の女王」などのテーマパーク増設への投資とともに、
2015年4月からの値上げを発表していましたね。


震災で一時休止して、営業再開した際にも値上げしていました。
常に、値上げの機会をうかがいながら、勇気をもって値上げをしなくてはなりませんね。


■それでもやるなら、値下げよりも、商品を無料で追加提供しよう

 

本筋ではないのですが、値下げをするくらいなら、
何かの商品をサービスする方がよいということも述べておきます。


例えば、2,000円の値下げをしたら、2,000円の収入減少となります。
しかし、たとえば、2,000円の商品をプレゼントした場合は、
実際は1,000円で仕入れていれば、1,000円のコストで済みます。


一方で、お客さんは同様に2,000円得したと思います。


商品プレゼントの場合は、原価で考えることができるので、
値下げよりはお得だと言われます。


 お客さんにとっての価値やコストは「売り値」であり、
会社にとってのコストは「仕入値や原価」です。


この考え方は、販促だったり、ミスがあったときの謝罪だったり、
様々な場面に応用できます。


■次回予告


次回は、
「段々忙しくなってきた!創業経営者が、従業員を雇用する時の費用と、意思決定」
というテーマでお送りいたします。


社長の時間についての考え方や、雇用する際の費用について、考察していきます。
どうぞ、お楽しみに!

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