Attackers Startup News

『10の「困った!」で知る、創業時の法律マメ知識#1』

今月から、起業家向けの法律コラム
『10の「困った!」で知る、創業時の法律マメ知識』を担当します、
弁護士の藤原美佐子です。

アタッカーズ・ビジネススクール(ABS)で、起業家としてのアントレプレナーシップや、
リーダーとしてのマナーなどを学んできました。
アントレプレナーシップ講座の受講を大きなステップとして、
この春、自分の事務所を設立いたしました。

弁護士になる前は司法書士として、会社設立や中小企業の会社組織に関して、
登記を通じて相談に対応してきましたので司法書士と弁護士の経験を踏まえて、
起業にまつわる法律について10回にわたって、お届けしたいと思います。

起業における法律の問題を、より身近な話題としてとらえていただけるよう、
なるべく簡単な事例相談に回答する形をとり、「自分にもあてはまるかも?」という問題意識に
つなげていきたいと考えていますので、ぜひご覧になってみてください。

それでは、第1回目となる本日のQ&Aはこちらです。

◆質問①◆==================================

「起業」っていったら、まず会社を立ち上げるってイメージがあるけど、
本当にその必要があるの?みんなどうやって決めているの??
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  ◆回答◆

起業には、【個人事業主】と【法人設立】という2つの選択肢があり、必ずしも
会社を立ち上げているわけではありません。


個人事業主と法人とでは、


1.税金・会計面
2.法律面
3.対外的な取扱い


で異なる部分があるので、自分の事業の内容、方向性、見通しで決めている人が多いようです。


一方で、あまり深い検討をせずに、起業決意の勢いに任せて、十分な検討がなされていないまま
「会社=株式会社」と安易に考えて、「株式会社」が選択されていることもあるようです。

では、具体的にどのような違いや規制があるのでしょうか。


まず初めに整理してみましょう。


 

1. 税金・会計面

ここについては、
ABS卒業生で、アソシエイツレターでも連載中(Attackers Startup Newsにも掲載中)の
会計士・萩口義治氏が書かれたコラムや、
同じくABS卒業生、大久保 幸世さんの会社のHPに記載がありますので、
そちらに解説は、おまかせします。


*Attackers Startup Newsに掲載の、会計士・萩口義治氏によるコラム
「いざ起業!個人事業主と法人設立はどっちが有利なの??」


*創業手帳Web
法人と個人事業主の税金・会計に関する違いまとめ


2. 法律面

 ネットで検索してみても、税金、会計面について解説をしているサイトは多く見かけますが、
法律の初歩的なことについて、記載はなかなかありませんね。


ここで、おさらいもかねて、何が違うのかみていきましょう。


■株式会社と個人事業主の法律面のちがい■


 ここでは、たくさんある法人の種類のうちの、株式会社を念頭にみていきます。
ポイントは大きく3つあります。


①株式会社は、設立手続きや運営に法律の規制がたくさんある
②株式会社は、個人とは独立して取り扱われる
③株式会社の出資者は、会社の債務について、出資額を超えて責任は負わない



①株式会社は、設立手続きや運営に法律の規制がたくさんある


 「株式会社」という制度は、人間は生まれることによって存在できることと違って、
法律によって技術的に生み出されたものです。
株式会社として存在するためには、法律に定められている要件を充足したり、
手続きを経る必要があります。


◆事業を始める場合―――――――――――――――――――――――――――――


個人事業主であれば、税務署に開業届を提出して、今日にでも屋号を名乗って
事業を始めることができます(業態によって届け出や許可が必要な場合を除く)。


株式会社は、定款を公証役場で認証する(公証人の手数料が必要)、目的を決める、
役員の選任をするなど、一定の要件を備えていること証明して、
設立登記(登録免許税15万円)を経ることで初めて存在することができます。
登記手続きは自分ですることもできますが、


・自分の目的にあった組織体制を考えたい
・新規事業の立ち上げの方に専念したいので、専門家に任せたい


などの場合は、登記手続きを専門家に依頼することになり、別途費用がかかります。


◆事業をやめる場合―――――――――――――――――――――――――――――


株式会社は、事業をやめるだけでなく、法律の定めに従って、債権者に通知をしたり、
会社の財産を処分したりするなどの、清算手続を経て、株式会社の
解散の登記(登録免許税3万円)をしないと、会社は存続し続けることになります。


これらの手続きを専門家に依頼するとさらに費用がかかります。


個人事業主であれば、税務上の届出が必要とはなりますが、
株式会社のように法律に定められた解散手続きはありません。


このほかにも


株式会社は、出資者と経営者が分離されているしくみになっているで、
出資者を守るために、適正な業務執行を確保するための規定があります。


・会社の規模に応じて、株主総会を開催時期(年一度)や決定事項
・取締役会の開催時期(最低3か月に1度)や決定事項


が法律で定められていて、これらの議事録の作成、
保管(10年間)まで法律で定められています。


会社法の規定を守った上での経営が求められます。


 とりあえず事業を始めてみよう!と思い立った場合に,会社を設立してしまうと、
事業以外の会社法上の規制を守るための手続きが面倒になったり、
辞めようにもさらに手続きが面倒ということになりかねませんので、慎重に考えてみてください。


②株式会社は、個人と独立して取り扱われる


株式会社は、構成員である株主とは別の独立した人格を法律の上で持つことになります。


Aさんが、


・個人事業主として事業を行う場合
・株式会社Xの代表取締役となる場合


で何が異なるか具体的な例で考えてみましょう。


◆例1:事務所を借りる場合――――――――――――――――――――――――――――


 Aさんは事業のために事務所を借りることにしました。
現実に契約内容の交渉をして、契約の署名、捺印をしたりするのは、
個人事業主の場合でも株式会社の場合でもAさんです。


しかし法律上は、株式会社は、個人とは独立して取り扱われるので、
株式会社自体が取引の主体になります。


Aさんは、株式会社Xを代理して、代表取締役として契約していることになります。


契約書の当事者の記載は、


・個人事業主の場合→A
・株式会社の場合→株式会社X 代表取締役A


  となり、Aさんが株式会社Xを代理して、
代表取締役として契約したことを記載することになります。


図


  事務所賃貸借契約の際の必要書類は、


・個人事業主の場合→Aの住民票、Aの個人の印鑑証明書
・株式会社の場合→会社の履歴事項全部証明書、法務局が発行する会社代表者の印鑑証明書、
実際に取引に来た人の身分証明書


となります。


株式会社の場合の必要書面で何を確認しているのでしょうか。


それは、以下の3つです。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
●会社の履歴事項全部証明書
→取引の主体となる会社が実際に存在するかどうか、取引権限のある代表者が誰かの確認


●法務局が発行する会社代表者の印鑑証明書
→契約書の印鑑が会社の印鑑証明の印鑑と同一であることを確認し、
取引権限のあるものによって、捺印されたことの確認


●実際に取引に来た人の身分証明書
→その人が、会社の代表として取引をすることができる人その人であるかの確認―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――


契約の効果が帰属する(家賃を支払う、期限がきたら事務所を明け渡すなどの
契約上の責任を負う)のは、


・個人事業主の場合→ A
・株式会社の場合→株式会社X


   となります。


  事務所の賃貸、口座開設などの重要な取引においては、
本人確認の必要性はもちろんですが、法律的に有効な契約を確実に結ぶために
必要書類が求められています。


株式のすべてを会社代表者が所有しているの場合、会社が独立の存在であることが
あまり理解されていないことが多いように見受けられます。


このように株式会社は、個人とは独立して取り扱われるので、契約書の表示、
必要書類、契約の効果など様々な場面で違いが出てきます。
このような違いは、例2のような場合にさらに影響を及ぼします。


◆例2:代表者が突然亡くなったり、病気で業務ができなくなった場合―――――――――――――


 ある日突然Aさんが不慮の事故で亡くなってしまった。
Aさんの事業の片腕として仕事をしていたBさんに、引き継いでもらいたい。


 ・個人事業主の場合


事業に関係する契約であっても、特約で特に定めがなければ、Aさんの家族など、
相続人に引き継がれることになります。


Aさんの事業の片腕として仕事をしていたBさんに契約上の地位を
交替してもらうためには、取引先の了解を得る必要があります。


 ・株式会社の場合


取締役同士で、Aさんの代わりに取締役のBさんを代表取締役に選べば、
契約をしなおすことなく取引を続けることができます。


株式会社は、個人とは独立して取り扱われるために、
会社自身が個人と切り離して継続して存在し続けることができるのです。


たった一人で事業を立ち上げるのなら、個人事業主で十分かもしれません。


しかし、仲間と一緒に事業を行う場合や今後仲間を増やして事業拡大を狙う場合には、
仲間との集まり自体に人格が与えられる会社を立ち上げる方が望ましいということになります。


 

③  株式会社は、会社の債務について、出資額を超えて責任は負わない 


前述したように、株式会社は個人と独立しているため、株式会社と個人の財産が区別されます。
そのため、株主は、株式発行の際に払い込んだ出資額を超えて責任を負うことはありません。


とはいえ、借り入れで資金調達する場合に、会社代表者が会社の連帯保証人となったり、
自宅を担保にいれたりして借り入れることが多く、この場合は、
個人の財産で責任を負うことになります。


■株式会社は印象がいい?■


  一般に株式会社のほうが、取引先の信用を得やすい、
従業員の確保がしやすいなどといわれています。


  これは、株式会社が税務上の難易度が高く、組織を運営していくのに
法律上のさまざまな規定に服していて、これらの手続きをきちんとやっている
と信頼された結果にほかなりません。


自らのビジョンや、ビジネスモデルを時間や労力をかけてブラッシュアップしてきたのですから、
それを生かすステージとして、個人事業主とするのか、会社をたちあげるのか、
起業のときに、ふと立ち止まって考えてみてください。


自らのビジョンを別の視点から見直すよい機会になります!


次回は、今回の③の有限責任を踏まえて、

◆質問②◆===========================

株式会社と合同会社は有限責任って聞いたけど、何が違うの?
本当に会社の負債を個人的に負わなくていいの?

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をお届けします。どうぞ、お楽しみに♪
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