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注目のABSアソシエイツ起業家紹介♯4

弁護士ドットコム元榮太一郎氏、クラウドワークス吉田浩一郎氏。
アイスタイル吉松徹郎氏、ミクシィ笠原健治氏。
上場後も活躍されるあの方々も、かつてはABS受講生でした。

前回から引き続き、「注目のABSアソシエイツ起業家紹介」として、
ABSで学ばれた経験を持つ起業家に、起業前から現在までの歩みや、
今後のビジョン、戦略等について本音で語っていただきます。

第4弾は、株式会社仕事旅行社 代表取締役 田中翼氏です。

なお、このコーナーの取材・記事執筆は、元ジャパンタイムズで、
現在フリーで活躍される井内千穂さんが担当します。





「普段見かけるフラワーショップの店員さんはどういう想いで仕事をしているんだろう。」
「毎日使っているこのメガネはどうやって作られているの?」
「大好きなお寿司。職人さんの技をもっと近くで見てみたい。」
普段の生活で経験することのない、見たことのない仕事を見に行こう。
さまざまな仕事を知るきっかけを提供するのが「仕事旅行」です。



仕事旅行社の公式サイトに掲げられた魅力的な文章が興味をそそる。
未知の土地を旅するように、未知の仕事を訪ねる旅というアイデアは、
2011年1月に同社を設立した田中翼氏の実体験から生まれた。


働くってこんなに自由なんだ!



大学を卒業して金融機関に就職した田中氏は、5年経った頃
「このまま自分はこの仕事をするのか?ほかの仕事の可能性はないのか?」と疑問を感じ、
異業種交流会やイベントに参加しては、そこで知り合った経営者に頼んで
仕事場を訪問させてもらうことを繰り返していた。
その中で訪ねたあるベンチャー企業。
服装も雰囲気も、自分が勤務する日本的な堅い職場とは全く異なり、
カルチャーショックを受けた。

「働くってこんなに自由なんだ!と気がつきました」と田中氏は振り返る。

視野が広がり世界観が変わったこの体験を、
ほかの人も体験したら面白いのではないかと思い、
それを仕組み化したのが現在の「仕事旅行」のサービスである。


とにかく始めちゃおう



確かに、金融機関での安定した収入やステータスからの転身は思い切った決断だが、
郊外に転居してからは「そんなに稼ぐ必要があるのか」と感じるようになり、
年齢的に自分と変わらないベンチャー企業の社長がとても楽しそうに働いている姿を見て、
「自分も動こう!」と思ったという。

しかし、夢のあるイベントのようなこのサービスが本当にビジネスになると思えたのか?

「ビジネスとして成り立つか成り立たないかは当初あまり深く考えず
 一回とにかく始めたい、という感じでしたね。」

VCから資金調達した時や公庫から融資を受けた時には計画性を求められ、
「大丈夫かな」と思ったが、それまではそんなに不安や焦りはなかったという。
ダメな場合は、サラリーマンに戻る道もあると考えていた。

では、巻き込んだ仲間はどうなのか?


この指とまれ!



一緒に会社を立ち上げた二人の同志のうち、
一人は元々フリーランスのウェブデザイナーで、今でも個人の仕事も受注している。
もう一人は勤務していた商社系の建築事務所を辞めて家業を手伝っている。
二人とも今も仕事旅行社のコアメンバーだ。
そのほか、パートタイムのスタッフや業務委託で成り立つフラットなチームなので、
「社長」と呼ばれると居心地が悪いと田中氏は言う。


shigotoryokou
「『こういうことやりたいんだよ、この指とまれ!』式で
 始めたので、そこに利害関係や計算などは一切ありません。
 みんなが面白がって集まってきてくれています。
 関係性はフルフラットですし、それぞれが持っている
 スキルを提供してくれるという流れになっています。
 社員をマネジメントするという感覚はないですね。
 たとえ、明日ウチが潰れても彼らは彼らでやっていくだろうし。」

「仕事旅行」を立ち上げてから3か月間は、
ユーザーからの申し込みが全くなかった。
半年ほど経った頃、口コミ情報をキャッチしたメディアから
取材の申し込みがあり、新聞・雑誌・TV・ラジオなど、
メディアがメディアを呼ぶ連鎖で知名度が上がると
徐々にユーザーが増えてきて、
現在は月間300件ほどの申し込みがある。


「旅行先」となるホスト企業のほうは、たった3社からスタートした。
ホスト先企業にとってはどんなメリットがあるのだろうか?

企業の認知度アップや、ブランドイメージの向上に繋がることや、
外部の刺激を取り入れられること、ファンやリピーターの獲得に繋がること、
優秀な人材に出会えることなど、ホスト先企業にとっての様々なメリットを
田中氏は挙げた。

「ただ、いまだにそうなんですけど、入り口の段階で
 『これ受け容れるメリットって何ですか?』と聞く人たちって、
 いくら説明しても受け容れてくれないです。
 逆に、最初から『面白そうだね』と言ってくれる人たちは、
 メリットなんて全然なくても『やろう!やろう!』みたいな勢いで
 入ってくれるんですよね。」

それがはっきり分かれていたので、メリットが何であるかというような企画書は作らず、
「こういう世界にしたいんです」というストーリー調の紙芝居を見せるだけの
プレゼンだったが、OKしてくれる企業にはそれで通じた。
当初は雑誌で見つけた面白そうな会社に飛び込みメールを送って新規開拓していたのが、
最近はネットワークが確立されたので紹介ベースになり、
現在約150社がホスト先として登録してくれている。


やりたいから続けてしまう



起業しても10年で95%が潰れると言われる厳しい世の中で、
少なくともこの5年間事業を続けてきた田中氏によると、
世の中で起業する人は2つに分かれる。

「一つはやりたいことをやっている人、もう一つはビジネスをやりたい人です。
 ビジネスとして始めた人たちは儲けるためにやっているので、
 ちょっとでも儲からないとやめてしまいます。
 しかし、やりたいことをやっている人は、事業を続けることが一番重要なので、
 稼げないとなると副業で稼いできたりして、とにかくやめない。
 やりたいから続けてしまう。改善を重ね続けた結果、うまく回るようになる。」

「やりたい」という思いの強さが持続する原動力は、
やはり、あのベンチャー企業を訪ねたことで広がった自らの視野、
それを伝えたいと感じた実体験だという。

「こういう世界があるのだと自分の肌で感じ、
 これを知ることはすごく有意義だと思いました。
 自分の中で腑に落ちているので、それを一人でも多くの人たちに
 知ってもらいたいという思いは変わりません。」


自由に働ける人たちを増やしたい



仕事旅行社のウェブサイトは充実している。
「仕事旅行」の旅行先一覧のほか、より長期の職場体験を提供する「仕事留学」、
逆に2時間程度で仕事の話が聞ける「東京仕事散歩」も選べる。
また、「シゴトゴト」では様々な職場の記事を読み物として提供している。

「自由に働ける人たちを増やしたい」ということが根本にある。
それに対して、最初に提供したのが一日職場体験であったが、
これに実際におカネを払うのはかなりニッチな層であることから、
もう少し幅を広げ、触れてもらう接点を増やすために、
情報だけを配信するメディアを作った。
逆に、体験のバリエーションを増やしたのが「仕事留学」や「東京仕事散歩」である。

「たとえば、Googleに『仕事』というキーワードを入れると
 『つらい』とか『辞めたい』っていう項目がダーッと出てくるような状況を
 なんとかしたいわけです。」

「日本人を元気にしたい!」ということで、
起業当初のメイン・ターゲットだった20代~30代の会社員だけでなく、
これから就職する学生、一度仕事を辞めた専業主婦層、定年を控えたシニア層への
サービスの提供も念頭にイベントなども開催する。


次のステージに向けて「戦略」が必要



「思いありき」で始めたビジネスが最近ようやく形になってきたところで、
次のステージに向けて、「戦略」が必要だと感じている。

2009年、まだ前職在籍中にABSの『ベンチャー事業創造講座』を受講した。
当時から起業したい気持ちはあったが、思えば自分のやりたいことが
まだはっきり見えなかった段階で「戦略」の講義を聴いた。
今こそ戦略の重要性を痛感していると田中氏は語った。

今後の事業展開として、一つは社員研修としての法人向け「仕事旅行」の販売、
もう一つは地域活性化事業を推進する自治体とのタイアップで
地方の職場体験先の増加を進めている。

ビジネスを起こすこと自体が目的のベンチャーだったわけではない。
また、儲けるために会社を大きくしたいわけでもない。
「人の可能性を広げる世の中」に近づけていくための事業だ。
しかし、ミッション実現のために人々を説得して
会費や寄付を募るNPOのようなあり方とも一線を画している。

「人の可能性を広げる」ワクワクするようなサービスが
人々に支持されれば、おのずとそれはビジネスとして成り立つことになる。
そして、「人の可能性を広げる世の中」というビジョンを実現するためには、
そのサービスをより多くの人々に届ける必要があり、
その手段として会社が大きくなることが必要であり、
会社を大きくするためには戦略が必要なのだ。


こういう世界が面白いと思う



そこに到る過程で、「『戦略が欠如している』とか『収益性が低い』とか、
周りの人たちに馬鹿正直に全部言ってしまう」と自覚する田中氏の周囲には、
「しょうがないなぁ」と言いながら手伝ってくれる心強い協力者たちが集まり、
「いろんな人を巻き込んでくるね」とよく言われるそうだ。
そのように外部のリソースを確実に巻き込む姿は、
「ビジネスを起こすこと自体が目的」ではなかったにせよ、
まさにベンチャー起業家と言えるのではないだろうか。

「『僕らはこういう世界が面白いと思う。』それだけなんです。」

それで完結しているのであって、何も押し付ける気はない。
そうだと思ってくれる人と一緒にやろうと思う。
自分たちが楽しい祭りのように事業をやっていれば、
周りは勝手に巻き込まれてくるという感覚だ。

その結果として、「人の可能性を広げる世の中」に一歩近づき、
気がついたら、仕事旅行の事業が大きくなって、さらに多くの人々を楽しませる。
そんな今後の戦略に注目したい。

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左:ABS統括責任者 加藤  右:田中氏
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