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★新連載スタート★ 「注目のABSアソシエイツ起業家紹介♯1」

弁護士ドットコム元榮太一郎氏、クラウドワークス吉田浩一郎氏。
アイスタイル吉松徹郎氏、ミクシィ笠原健治氏。
上場後も活躍されるあの方々も、かつてはABS受講生でした。

今回から、「注目のABSアソシエイツ起業家紹介」として、
次代を牽引し、日本のビジネス界をリードすることが期待される
アソシエイツ起業家をピックアップして、毎回1名ずつ紹介します。

起業前から現在までの歩みや、今後のビジョン、戦略等について
本音で語っていただきます。

第一弾は、株式会社アイコトバ代表取締役社長の田中謙二さんです。

広告アプリ「アイコトバ」着想の秘話や、
困難に立ち向かい今に至るストーリーをぜひ体験してください。

なお、このコーナーの取材・記事執筆は、
最近までジャパンタイムズに勤務し、
このたび独立された井内千穂さんが担当します。

~株式会社アイコトバ 代表取締役社長 田中謙二氏
「スマホに向かって合言葉を唱えると全国のファミマでコーヒー1杯無料になるクーポン券がもらえます」

アプリによるこのユニークなサービス「アイコトバ」を展開する田中謙二社長は
2009年にABSの『ベンチャー事業創造講座』で学び、2011年4月に株式会社アイコトバを設立した。
キャンペーン期間中に市ヶ谷のファミリーマートで無料コーヒーをもらった受講生も
多かったのではないだろうか。

アイコトバはスマートフォンの音声認識機能を利用し、
広告主企業のアイコトバを音声入力するとクーポンを獲得できるサービスである。
クーポンを発行するのは広告主企業自身ではなく、コンビニや飲食店など集客をしたい店舗。
クーポン発行主にとっては、アイコトバアプリへの掲載料も成果課金も無料という
販促・集客ツールとなっている。

調査結果によれば、消費者の広告接触は一日約3,000件だが、
ほとんどの広告が振り向いてもらえないというのが現実だ。
情報が多くなればなるほどスルーされていく情報も増え、
SNSをはじめウェブページ閲覧数は膨大になっても、
広告クリックレートは下降線を辿っている。

広告主からすれば、表示回数ばかり多くても意味がなく、
せっかく広告出稿するからには自社ブランドを消費者に深く認知してもらうことが重要だ。
やはり、ブランドが深く認知され、すぐに思い出してもらえるほどよく売れるわけで、
たとえば、「本を売るならブックオフ」とか「結婚情報誌と言えばゼクシー」のような
“第一想起”を獲得すれば、 企業にとって販売促進が容易になるのである。

情報が溢れる中で人の耳目(=アテンション)を集めるのは容易ではないが、
田中社長は「アテンションのフェアトレード」を提唱する。

「今までの広告は見聞きしたからといって、消費者に直接的なメリットはありませんでした。
限られた時間やアテンションを搾取されているわけです。アイコトバはあなたを搾取しません。
あなたの時間を使って注目してくれたら、それ相当のメリットを差し上げますという考え方です。」

クーポン券の提供というインセンティブによって消費者のアテンションを獲得し、
さらに、アイコトバ(=広告主がアピールしたい短いフレーズ)を
実際に声に出してもらうというアクションによって、企業ブランドを消費者の脳裏に刷り込む、
アイコトバはその両方の機能を備えている。

英語の勉強でもそうだが、
「声に出して話す」のは「見る」「聞く」の12倍以上の記憶の効果があると言われており、
目下、アイコトバは青山学院大学の広告心理学研究室と共同で効果測定を実施中である。

このようなアイデアはどこから生まれたのか?

1999年に外資系金融機関にSEとして就職した田中社長は、
その後の金融再編の中でベンチャー企業に移り、
複数の総合商社の子会社によるeコマースビジネスや出版社の子会社による
病院検索サイトの構築などの新規事業に携わった。
営業のために何千件もの電話をかける中で、知名度が低いことのつらさを痛感し、
扱っているサービスをいかに世の中に知らしめるかという課題に常に取り組んできた。

「たとえば、『インターネット通販は○○(楽天市場ではない)』って全国で一斉に言わせられたら
状況が変わるかなあと思っていました」
と田中社長は振り返る。

ブランド名を声に出して言ってもらえばユーザーが増えるのではないか
という発想から生まれたアイコトバのプランをABSに持ち込んで
ビジネスモデルとしてブラッシュアップし、起業に踏み切った。
事業プランを考えるうちに、これを早く世の中に出したいという思いが強まった
と田中社長は言う。

「ABSで事業プランに落とし込めたのは収穫でした。立ち上げの時のシステム開発をはじめ、
ABSで出会った方々のネットワークには今までずいぶん助けられてきました。」

しかし、アイコトバのようなサービスは世界を見渡しても一つもなく、
まずはそのビジネス性を企業に理解してもらうための啓蒙から始める必要があった。
投資家に話すと「ブルーオーシャン過ぎる」と言われた。ほめ言葉であると同時に、
市場性という意味ではまだ懐疑的だったのだ。

そんなサービスを思いついてしまったからには、それを実現できるのは自分しかいない。
「そんなに立ち上がっていないビジネスを5年も続けるって、相当執着心が強くないとできませんよ」
と田中社長は語る。
他人をそこまでつき合わせられず、設立以来メンバーは2回転した。

最初にオフィスを間借りしていた飯田橋からも近く、
渋谷や新宿ほど店舗数が多くない高田馬場界隈の飲食店200軒に飛び込むと、
50軒がクーポン提供に応じてくれた。
もちろん、50軒程度では大きなサービスができるわけではないが、手応えを感じた。

「200~300万人のユーザーをつければ、このビジネスにいくらでも出資する」
と言った投資責任者もいた。
着想も良いし声に出すという斬新さもあるが、
問題は国民を巻き込んでどうやって定着させるかだ。
5年間努力する中で、これを一人でやるのは無理なのではないかと弱気になることもあった。
たとえば、ヤフーのような大手がその気になれば1カ月でビジネスとして立ち上がるだろう。
誰かにこのアイデアをやらせたほうがサービスの定着に良いのではないか?
しかし、大手に持ち込んでも、手離れが悪くまだ立ち上がっていないビジネスを
誰かがやってくれるとは思えない。
やはり、生みの親である自分がこれを大きくする責任がある。そう腹をくくった。

「前職時代に比べると高田馬場でのアイコトバの反応はすこぶる良いものだったので、
あとは誰と組むかだと思いました。」

飛び込み営業を含め、粘り強くアクションを続けていく中で、
あるとき逆に証券会社のベンチャー担当が飛び込んできたことが、
やがて、ファミリーマートとつながるきっかけとなる。

「たとえムダになっても毎日続けていると、スッとうまく行くことがあるんですね。
そういうことに助けられてここまで来ることができました。」

期間限定のコーヒー無料サービスから始まったファミリーマートとのご縁は、
年間契約に発展し、 ミニストップ、ローソン、セブン-イレブンなど
全国のコンビニへのアプローチも徐々に進んできた。
さらに、クーポン掲載先10万軒を目標に、
日常の消費行動に直結し利用頻度の高い店舗を中心に、
ドラッグストア、クリーニング、カフェのチェーンなどへの展開も進めている。
クーポン主は掲載料を負担することなく、来店客に値引きをするだけでよい。
コンビニチェーン大手3社合わせると月間10億人がレジを通過しており、
「月間で1,000万回アイコトバが音声入力される世界を早く実現したい」
という田中社長のビジョンも夢ではない。

現在のところ、アイコトバアプリは5万ダウンロードほどだが、
クーポンを使いたいアクティブなユーザーを
早期に増やすためのキャンペーンも積極的に展開中である。

つい最近のこと。
3月5日と6日の両日、名古屋ドームと京セラドームでそれぞれ開催された
日本vs台湾代表の試合中、 球場のビッグスクリーンに
アイコトバが大きく映し出された。
観客がアイコトバを入力するとその場で侍ジャパン特製待ち受け画像がもらえる!
そんなイベントも実現したのだ。

5年前には話を聞いても理解せず、相手にしてくれなかった新聞、ラジオ、テレビなど、
メディアのパートナーも増加中である。
広告販売に苦戦し続けるメディア側が、
今や音声入力とのタイアップに活路を見出そうとしているのだから面白い。
「アイコトバは○○」という大きな新聞広告を見る日も近いかもしれない。

さらに分野を広げ、アイコトバを使った避難訓練を提案している。
たとえば、「私の避難場所は、××中学校」などと唱えて避難経路を歩き、
避難指定場所に着くとミネラルウォーターや非常食と引き換えてもらえるという訓練。
アイコトバアプリのGPS機能を使えば、避難経路のビッグデータが取れるので、
災害時に一斉に避難した場合に混乱をきたしそうな地点を
あらかじめ予測することも可能になる。
全国の自治体への営業に向けて準備中である。

この5年間で、ようやく全国チェーンのコンビニとの事業などが軌道に乗り始め、
まずは国内でアイコトバのモデルを浸透させ広げていく段階まで来た。
しゃべることによって、人の意思や消費行動が変わることを狙い、
さらに、それを可視化したビッグデータを生かして
次のマーケティングサービスにつなげていきたい
と田中社長は語る。

アイコトバを日本で定着させることができたら、
次のステップとして海外への展開も視野に入れている。
もともと、「山」と問われれば「川」と答え、
互いが仲間であることを確認するために
前もって定めておいた言葉をやり取りするという、
忍者が使った合言葉は日本人にはお馴染みだろう。
アイコトバはそこから発想を得たサービスでもあるが、海外には類似のサービスがない。
音声を使った広告サービスという日本発のアイデアが世界を変えるかも知れない。

「やりたいなと思った時が起業するときだと思います。
私もABSで学ばせてもらったものの、 決して準備がじゅうぶんな状態で
起業したわけではありません。
ABSに来ている人なら、まあ死ぬことはないので、
ぜひ起業に踏み切ってもらいたいですね。
ダメだったらまた別の道もありますし、まずはやってみることが大事かなと思います」
と受講生にエールを送る田中社長であった。
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